ナチスのイメージだけじゃない──「.ss」が使われない理由
人知の及ばぬ32ビットの空間に、
名前がついたその日から、
見知らぬあなたと、見知らぬあなたに、
ウェブの糸がつながった
ドメインの織りなす運命を解き明かす
あらたな世界の扉が開かれる
それが、あなたの知らないドメインの.世界
「.ss」が使われない理由は、ナチスのイメージだけじゃないことをご存知ですか?
2011年にスーダンから独立した南スーダン共和国(Republic of South Sudan)に、同年8月31日にccTLD(国別トップレベルドメイン)の「.ss」が割り当てられました。
ドメインの登録要件は「誰でも取得可」「南スーダンへの拠点不要」とされているにもかかわらず、登録されているのは500件あまり。ほとんどが政府・公的機関の利用で、一般向けの開放は極めて限定的です。
なぜ「.ss」は使われないのでしょうか。
“SS”は第二次世界大戦中のナチス親衛隊「Schutzstaffel」を連想させる略称でもあります。このため欧米では倫理的な懸念が指摘され、国際的な販売展開が慎重になっているのです。しかし、「.ss」が登録できない理由は、それだけではありません。
そもそも、多くの国際レジストラ(GoDaddy、Namecheapなど)で取り扱いがないのです。
その理由は、いくつかの事情が重なっています。
・政情不安と通信行政の未整備
南スーダンは独立直後から内戦が続き、通信を管轄するNCA(National Communication Authority)も体制再編を繰り返しています。安定的なドメイン運用のために必要な契約・技術基盤を維持するのが難しい状況です。
・国際レジストラとの接続が未整備
通常、ドメインはレジストラ(販売業者)とレジストリ(管理者)がEPPという標準プロトコルで接続されています。しかし「.ss」はこの国際的なEPP接続が整っておらず、多くの国際レジストラは「登録・移管できない」状態が続いています。
・商業的メリットが乏しい
南スーダンのインターネット普及率は10%前後と低く、国内企業や個人のウェブサイト需要も限定的。
南スーダンのレジストリssNICは、2024年11月より「.ssの一般登録受付を制度上開放する意向・方針」を示しました。しかし、多くの国際レジストラでは「.ss」の取り扱いがない状態のままです。
参考
iana – .ss
ssNIC
TLD-List – .ss
WIKIPEDIA – .ss
Netim – .ss
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