【第68回】国名を使用したドメイン、政府に剥奪される

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人知の及ばぬ32ビットの空間に、
名前がついたその日から、
見知らぬあなたと、見知らぬあなたに、
ウェブの糸がつながった
ドメインの織りなす運命を解き明かす
あらたな世界の扉が開かれる
それが、あなたの知らないドメインの.世界

 

 

国名を使用したドメインを政府が剥奪したことを、ご存知でしょうか?

 

スイスの連邦政府及び州政府は、2000年より「ch.ch」をホームページアドレスとして使用してい
ます。
.ch」はスイスに割り当てられているccTLD(国別コードトップレベルドメイン)。スイス
のラテン語の正式国名「Confoederatio Helvetica」に由来しており、公用語ではないラテン語が
スイスの正式国名になったのは、
スイスの4つある公用語の公平性を保つことを理由としています。

 

しかし、この「ch.ch」は認知度が低く、利用しづらい等の批判の声が上がっていました。そこで
政府は、「schweiz.ch」、「suisse.ch」、「svizzera.ch」を新たなアドレスとすることを考え
ましたが、
既にこの3つのドメインはチューリヒ在住のシュテファンフライ氏が1995年に取得して、
自社サービスのアドレスとして運用していました。

 

政府は、市民にもっとアクセスしてもらうため、「これらのドメインが欲しい。ドメインの登録を
取り下げる費用だけは負担する」とフライ氏に伝えると、
同氏はこの要求を拒否。すると、政府の
トマスゼーゲッサー法務局長は「私たちは一切、ドメインにお金を払うつもりはありません」と言
い切りました。
つまり、フライ氏に買収交渉をすることなく、法的権利をかざしてドメインを取り
上げる手段に出たのです。
これに対し、フライ氏は強く反発。同氏の弁護士は「これは違法行為を
めぐる戦いや、政府のドメイン・アドレスがわかりにくい、という議論ではありません。
これは
スイス全体のインターネット業界を揺るがす問題なのです」と日刊紙ノイエチュルヒャーツァイトゥ
ングに語り、政府と全面対決する構えとなりました。

 

フライ氏所有のホームページアドレスをクリックするとTシャツや、旅行の案内などが出てくる。
スイスを代表するようなドメインがこのようなサイトに使われては、政府としては困る。
2006年
2月、交渉がまとまらない状況に業を煮した政府は、世界知的所有権機関(WIPO)に裁定を委ね、
2006年5月、この3つのドメインはスイス政府のものとなりました。

 

世界知的所有権機関は、「フライ氏が『スイス』という名を使うことはできない。フライ氏所有の
ドメインは今後連邦政府のものである。
また、フライ氏は『スイス』という、聞けばすぐスイス政
府を連想する名を使うことで政府に害を及ぼしている」という結論を出しました。

 

この結論を受けた連邦法務省は、同じような問題を扱っている連邦最高裁判所にとって、よい判決
例になったと喜びました。
また、許可を得てない個人が公的な名称を勝手に使うことを禁止する基
本原則を示した判決とも言われています。

 

参考
WIPO Arbitration and Mediation Center
政府と個人の間でドメイン・アドレスを巡る戦い
「www.suisse.ch」は誰のドメイン?

 

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