“1文字.com”を求めて17年――ICANNとVerisignに挑み続ける男の記録

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人知の及ばぬ32ビットの空間に、
名前がついたその日から、
見知らぬあなたと、見知らぬあなたに、
ウェブの糸がつながった
ドメインの織りなす運命を解き明かす
あらたな世界の扉が開かれる
それが、あなたの知らないドメインの.世界

 

 

“1文字.com”を求めて17年もの間、ICANNとVerisignに挑み続ける男性をご存知ですか?

 

その人物は、ミンジエ・ジェン(Minjie Zheng)氏。
彼は長年にわたり、1文字の.com / .netドメインや、予約された2文字ドメインを自分も登録できるべきだと主張し、中国でたびたび訴訟を起こしてきました。業界メディアによると、提訴は2008年、2011年、2014年、2018年、2020年に及び、対象は67件の1文字.com / .netドメインなどだったとされています。

 

そもそも「.com」や 「.net」では、1文字ドメインや多くの2文字ドメインは歴史的に予約扱いとされてきました。ICANNも過去に、gTLDにおける1文字・1桁ドメイン名はほぼすべて予約されていると説明しています。

 

中国で敗れた後、ジェン氏は2025年5月、米カリフォルニアでICANNとVerisignを提訴しました。訴状では、独占禁止法違反や契約違反、不公正な営業慣行などを主張し、裁判所に対して、対象ドメインを自分に登録させることや損害の賠償を求めました。

 

しかし、2025年9月、裁判所はICANNとVerisign側の主張を認め、訴えを退けました。さらに裁判所は、ジェン氏の訴訟追行には**bad faith(悪意)**があったと判断しました。命令文では、根拠の乏しい申立ての反復や、却下済み論点の蒸し返しなどが問題視されています。

 

この件で特に注目されたのが、AI生成による虚偽引用です。裁判所は、ジェン氏が確認不能な判例を多数引用したと認定し、未検証のAI生成引用を使ったことが問題になりました。

 

その後、Verisignは対応を強いられたとして弁護士費用を請求し、裁判所は2025年12月、ジェン氏に約6.6万ドル(※約1,030万円)の支払いを命じました。 それでもジェン氏は争いをやめず、2026年1月には控訴したと報じられています。

 

ちなみに、1文字の「.com」は極めて例外的な存在です。長らく「q.com」「x.com」「z.com」が代表例として知られてきましたが、その後は「o.com」の解放も進められました。つまり、“1文字.com”は思いつきで取得できるものではなく、ICANNとレジストリのルールの上に成り立つ、きわめて特殊な領域なのです。

 

17年にわたって“1文字.com”を追い続けるジェン氏。
その執念が報われるのか、それとも高すぎる代償だけを残して終わるのでしょうか。

 

※2025年12月のレート  1ドル=約156円

 

参考
Chinese man won’t give up his fight for valuable one-letter .com domains
UNITED STATES DISTRICT COURT CENTRAL DISTRICT OF CALIFORNIA
https://www.icann.org/en/public-comment/proceeding/release-for-registration-one-com-domain-name-with-a-single-character-label-ocom-10-05-2018
.NET Registry Agreement Appendix 6 | Schedule of Reserved Names

 

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